ダマスカスの伝統お菓子は、シリアの豊かな食材と歴史が織りなす、甘く芳醇な文化そのものです。特に「お菓子の本場」と称されるミーダーン地区は、100年以上続く老舗が軒を連ねる、伝統菓子の聖地として知られています。
代表的なお菓子には、ピスタチオとゴマのクッキー「バラゼク」、糸状の生地でナッツを巻いた「マブルーマ」、ナッツを蜜とパイ生地で包んだ「バクラワ」などがあります。また、ラマダン(断食月)には、揚げた薄い生地に糖蜜をかけた「ナーミム」や、ナツメヤシなどを詰めたパン「マアルーク」が欠かせない存在です。
🍯 ダマスカスを代表する伝統菓子
| お菓子の名前 | 特徴 | 主な素材 |
|---|---|---|
| バラゼク (Barazek) | 片面にゴマ、もう片面にピスタチオをまぶした、薄くてサクサクのクッキー。お茶請けや手土産の定番です。 | 小麦粉、バター、ゴマ、ピスタチオ、蜂蜜 |
| マブルーマ (Mabrouma) | 糸状の細い生地でナッツをぎっしりと巻き込んだ、贅沢な甘さの焼き菓子です。 | 糸状の生地、ピスタチオなどのナッツ、シロップ |
| ハラワート・ジュブン (Halawet el-Jibn) | もちもちした小麦の生地でクロテッドクリーム(キシュタ)を巻き、蜜とピスタチオをかけた冷たいお菓子。ホムスやハマーが本場とされます。 | 小麦粉、チーズ、キシュタ、シロップ、ピスタチオ |
| ナーミム (Na’ameh) | ラマダン(断食月)の日没後に食べられる、薄く揚げた生地にブドウやナツメヤシの糖蜜をかけた伝統的なお菓子です。 | 小麦粉、水、塩、糖蜜(ブドウまたはナツメヤシ) |
| マアルーク (Maarouk) | ラマダンに欠かせない、柔らかい甘いパン。ナツメヤシやココナッツ、カスタードなどを詰めてゴマをまぶします。 | 小麦粉、ナツメヤシ、ココナッツ、ゴマ |
🏛️ お菓子の都「ミーダーン」と歴史
ダマスカス南部のミーダーン地区は、シリアを代表するお菓子作りの中心地です。19世紀頃から発展し、ヨルダンやサウジアラビアへ向かう旅行者の通り道であったことから、土産物としても製造が盛んになりました。現在でも、100年近い歴史を持つ家族経営の菓子店が多く、伝統の味を守り続けています。
また、シリアのお菓子作りの歴史は古く、7世紀のウマイヤ朝時代にまで遡るとも言われています。シリア各地の小麦、アレッポのピスタチオ、澄ましバター(サムネ)など、地元の豊かな産物を贅沢に使うのが特徴です。
🍽️ その他の伝統菓子
上記のほかにも、ダマスカスには多彩な伝統菓子があります。
- グライベ (Ghraybeh):ピスタチオを載せた白いクッキー。
- アッシュ・ボルボル (Aish el-Bolbol):ピスタチオを糸状の小麦で巻いた「鳥の巣」のようなお菓子。
- 各種のヌガー:ピスタチオなどが練り込まれた白いヌガーは、寄木細工の箱に入れられたお土産としても親しまれています。
これらのお菓子は、シリアの歴史と文化を味わうことのできる、まさに「食べる遺産」と言えるでしょう。
